悪性神経膠腫培養細胞U251、T98、SF188を用い実験をおこなった。まず細胞よりタンパク質を抽出しphospho-AKT抗体を用いたウエスタンブロットをおこなった。全細胞株において発現の亢進を認めた。第二に抗腫瘍薬CDDP、VCR、Etoposideを細胞に投与し48時間後の細胞数を計算した。するといずれの細胞においてもVCRにのみ抗腫瘍効果が確認された。第三にPI3K阻害薬LY294002またはmTOR阻害薬を単剤あるいは抗腫瘍薬と同時に培養細胞に投与し、48時間後の細胞数を計算した。結果としてLY2904002は単剤でも抗腫瘍効果を認めたが、VCRとの併用では抗腫瘍効果が増強されることが明らかとなった。薬剤投与後に培養細胞を回収し、タンパク質を抽出しphospho-AKT抗体を用いたウエスタンブロットをおこなった。結果としてLY2904002によりphospho-AKTの発現は減弱せず、LY2904002+VCRでは、むしろphospho-AKTの発現はさらに亢進することが明らかとなった。しかしながらCDDP、Etopside、mTOR阻害薬には抗腫瘍効果が認められず、LY2904002との相乗効果も認められなかった。したがってVCRの抗腫瘍効果はPI3K-AKT pathwayに密接な関係があると考えられたが、他の抗腫瘍薬には別の経路が強く関与している可能性が示唆された。今後、さらに詳細にAKT下流の経路に関して研究を進めていく予定である。
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