研究概要 |
現在、さまざまな医療分野で再生医療のための基礎研究が推進されている。中枢神経系の再生も、そのひとつで大きな期待がかけられている。一般に、中枢神経系のニューロンの再生については次のような問題があげられる。(I)ニューロン自体が変性し、細胞死に陥りやすい。(II)髄鞘を形成しているオリゴデンドログリアが軸索再生阻害因子を出している。(III)アストロサイトが増殖して、阻害因子の分泌のみならず、瘢痕を形成し、それが軸索伸展の物理的バリアーとなる。これらの課題を1つ1つ解決していけば中枢神経系の再生も可能になってくる。 一方、脊髄損傷では、局所の種々のシグナル伝達系が活性化されるが、申請者のこれまでの検討では、JAK-STAT pathwayが急性期より活性化される。これはサイトカインのひとつであるインターフェロンβにより活性化されるpathwayであり、中枢神経の損傷・再生とインターフェロンβとの関連を示唆する。 本研究の目的は、インターフェロンβ刺激による、中枢神経系細胞の挙動をin vitroにおいて検討し、in vivoでの脊髄損傷モデルにおけるインターフェロンβの中枢神経の機能再生効果を検討することであった。 この目的を達成するために、今年度は中枢神経系構成細胞であるニューロン、アストロサイト、オリゴデンドログリアの分離培養法とマウス脊髄損傷モデルを確立した。 まず、新生マウスの髄膜を除去し、大脳皮質から分離し、ニューロンの初期培養を行った。残りの大脳をナイロンメッシュにより懸濁した。10%ウシ血清入りの培地で14日培養し、shaking-off法にてオリゴデンドログリアを分離した。それぞれの純度の評価には、細胞特異的なマーカー(Tuj1,GFAP, oligo)を用いた免疫染色をした。その結果、それぞれ80%〜90%の純度で分離培養することが可能であった。 次にC57BL/6マウスもしくはKSNヌードマウスを用いてTh8レベルに椎弓切除を施し、同部位を圧迫する方法で脊髄損傷モデルを作製した。その結果、安定した中程度の脊髄損傷モデルを作成することができ、病理組織学的検討でも損傷後7日〜14日目に損傷部位に顕著なリンパ球浸潤と反応性グリアの形成が認められた。
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