ラットを用いた視覚野刺激・多点計測実験 正常ラットを用いて、麻酔下で脳表に多極微小皮質内電極を定位的に視覚野に設置した。まず光刺激で網膜を刺激し、マルチチャンネル電極神経信号収集システムで計測した。また同じ電極を用い、その一極からの単発刺激を行い、周辺電極からの反応を記録し、これらで得られるスパイクを比較検討した。網膜光刺激での多点計測ではspikeの収率は約30%と高い値が得られた。Perievent histogramを用いたスパイク潜時の解析から、網膜光刺激では一次視覚野と高次視覚野の2タイプの誘発スパイクパターンを認めたが、一次視覚野への双極電気刺激では高次視覚野パターンのみを認めた。Joint PSTHを用いた解析では網膜光刺激、後頭葉電気刺激共に複数の機能結合群を認め、その空間分布には部分的類似性を認めた。これらの結果から、後頭葉の単発パルス刺激は網膜光刺激とは部分的に類似した高次視覚野の神経活動を誘発するが、周辺の視覚野には皮質間連絡の分布を示すのみであると考えられ、単極刺激での限界がある。しかしながら、空間分布を利用することで、多点刺激により視覚に近い感覚を誘発できると考えられる。また、より末梢に近い視放線を刺激することが、網膜刺激に近似すると考えられる。次年度は視放線刺激をこれらの結果と比較し、刺激部位を検討し、さらに多点刺激を加えることで、人工視覚の実現に近づきたい。
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