研究の目的:脊髄障害では、疾患別に回復可能な閾値が存在すると考えられるが、脊髄機能評価法そのものが確立していないため具体的な指標は示されていない。われわれは、脳磁図により、脊髄機能を定量評価する方法を考案報告したが、この研究をさらに進め、脳磁図による脊髄機能評価により、疾患別の脊髄回復可能閾値を明らかにし、客観的な手術適応の指標を示すことを目的とする。研究実績:平成17年度は頚椎症15例、頚髄髄外腫瘍8例、頚髄髄内腫瘍6例、脊髄空洞症4例の計33例に対して、術前術後に患者の左右正中神経を刺激し体性感覚誘発磁界を求めた。このdipoleの大きさを指標に手術成績を評価した。現在のところ頚椎症患者では術前dipole値と術後の回復には明らかな関連を認めている。また頚椎症では術前dipole値が17.5nAm以下になると術後に回復した症例はなく、回復可能閾値が存在すると推定された。一方髄外腫瘍では術前dipole値が高度に低下していても全例良好な回復が見られた。また脊髄空洞症では全例術後に空洞は消失したが、術後dipole値が改善した症例はなかった。髄内腫瘍では脊髄そのものに手術操作が加わるため、術前dipole値と術後の回復には明らかな関連はなかった。今回の検討から、体性感覚誘発磁界の回復には疾患別に特徴があることがわった。これはそれぞれの疾患での脊髄障害機序の違いを反映していると思われる。
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