研究概要 |
研究の目的:脊髄障害では、疾患別に回復可能な閾値が存在すると考えられるが、脊髄機能評価法そのものが確立していないため具体的な指標は示されていない。われわれは、脳磁図により、脊髄機能を定量評価する方法を考案報告したが、この研究をさらに進め、脳磁図による脊髄機能評価により、疾患別の脊髄回復可能閾値を明らかし、客観的な手術適応の指標を示すことを目的とする。研究実績:平成16,17年度の研究結果を検討した結果、キアリ奇形に伴う脊髄空洞症患者では術前dipole値が低下していた患者では、術後dipole値が回復することはほとんどなく、体性感覚伝導路に非可逆的変化が起こっていると推測された。このため、術前dipole値が低下している症例では症状が軽度でも積極的に手術を考慮する必要があると思われた。この結果は脊髄空洞症の治療適応を考える上で非常に興味深い。頚椎症については、術前dipole値が17.5nAm以下になると術後に回復した症例はなく、回復可能閾値が存在すると推定された。しかし頚椎症では感覚障害だけではなく、四肢の運動障害が治療適応を考える上で重要であること、また脊髄への圧迫は軽度でも神経根症状が強く患者が強い痛みを訴える場合もあるため、脳磁図計測結果をそのまま、治療適応に反映させることはできなかった。神経鞘腫に代表される硬膜内髄外腫瘍では術前dipole値が高度に低下していても術後、大部分の症例でdipole値の有意な回復が見られた。このため、術前dipole値によって手術適応、および回復程度を予測することはできなかった。結果として脳磁図による脊髄機能評価が最も適しているのはキアリ奇形に伴う脊髄空洞症の治療適応および治療効果判定であった。
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