腰椎疾患において、難治性の馬尾神経、神経根障害から生ずる痛みやしびれは、手術治療しかないのが現状である。しかしながら確実性や侵襲の大きさから、まだまだ問題点が残る。 近年、疼痛治療分野においても再生医療的アプローチを使用した遺伝子治療法の研究が進められている。本研究の目的は馬尾神経、神経根に対して、安全で副作用のない遺伝子導入を行い安全で副作用のない生体モルヒネを長期間発現させることを目的としている。 ラット馬尾神経、神経根に対しAdeno Virusを使用したLacZを含んだプラスミドを注入し発現程度、範囲、を観察した。注入部位は神経根と後根神経節を選択した。神経根、後根神経節、脊髄に効率良く取り込まれた。これらの発現細胞は、神経根では特にシュワン細胞、後根神経節では、神経細胞、脊髄においては運動神経細胞、グリア細胞であった。行動学的評価、組織評価では神経の損傷を疑わせる所見はなかった。また前進状態においても特に副作用を示唆する所見はなかった。 現在は内因性オピオイド遺伝子(encephalin、endorphin)を組み込んだ遺伝子を導入し、その伝播と遺伝子の発現、さらに除痛効果について観察中である。内因性オピオイドは代謝が早く臨床応用されないが、細胞に導入可能ならその発現は3-4週と考えており、実際にそのプラスミドはコロンビア大学より供与を受けている。その際の疼痛評価は、行動学的評価と一次感覚神経と脊髄後角の反応性を電気生理学的手法と、免疫学的手法を用いて検討中である。
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