細胞培養:家兎の膝関節から関節軟骨を薄切し、酵素処理して軟骨細胞を単離した。これを比較低密度でプラスチックシャーレに単層培養した。概ね17年度と同じ実験系を用いたが、標本数を増やし詳細な観察を行った。つまり、Fura2を培養液に添加しカルシウム濃度を蛍光観察し、細胞によってCa濃度の周期的な自律変動があることを観察した。この自立的変動を定量的に解析し、刺激がないときの基準値を作成した。続いて、培養液にUTPを加え、培養液中に放出されたATP濃度上昇をルシフェリン/ルシフェラーゼで半定量的に測定することに成功した。そしてUTPを加えたときに細胞内Ca濃度が無刺激時の基準値を超えて上昇していることが明らかになった。同じ実験系に20μM Suramin(ATP受容体阻害剤)を加えると、Ca濃度は基準値を超えることがなかった。したがって、Ca濃度変化の伝播はATP受容体阻害によってほぼ完全に遮断されると結論した。さらに細胞内レベルでの詳細な観察をするために、パッチクランプでATPチャネルの検出を試みたが、これは成功しなかった。乳腺細胞では同様の方法で成功していたが、軟骨細胞の場合には長時間の酵素処理や非生理的な低密度培養などが影響していると考えた。 組織培養:家兎の膝関節軟骨を0.2mm程度に薄切し、共焦点顕微鏡で細胞内Ca濃度を観察した。前年度は軟骨の準備方法が一定にできなかったためにATPの効果をアーチファクトから区別することはできなかったが、専用の刃物を考案して厳密な観察をすることに成功した。そしてATPおよびATP阻害剤の効果が細胞培養のときとほぼ同じであることを確認した。
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