1.Cbl-b遺伝子欠損マウスを用いた研究 (1)骨形成マーカーのmRNA発現 坐骨神経切除を行ったマウス大腿骨における骨形成マーカー(アルカリフォスファターゼ、I型コラーゲン、オステオカルシン)の発現は野生型マウスでは減少したが、Cbl-b遺伝子欠損マウスでは有意な減少は認められなかった。 (2)IGF-1シグナル伝達分子の発現 坐骨神経切除モデルの大腿骨におけるIGF-1シグナル伝達分子(IRS-1、PI3K、Akt)の発現は、mRNAレベルでは有意な変化は認められなかった。蛋白質レベルでは、IRS-1はCbl-b遺伝子欠損マウスでコントロール群、坐骨神経切除群共に有意な増加を認め、PI3K、Aktは野生型マウスの坐骨神経切除群で有意な減少を認めた。 (3)骨芽細胞のIGF-1に対する応答 野生型マウス頭蓋冠由来骨芽細胞にIGF-1を投与したところ、細胞数は約2倍に増殖したが、Cbl-b遺伝子欠損マウス由来骨芽細胞では約3倍に増殖した。一方、骨芽肉腫由来UMR106細胞にCbl-b遺伝子を過剰発現させたところ、IGF-1を投与してもその細胞数に増加は認められなかった。 現在、野生型マウス、Cbl-b遺伝子欠損マウスの坐骨神経切除モデルの大腿骨組織切片を作製し、骨形態計測を依頼中である。 2.宇宙フライトラットの骨サンプルのマイクロアレイ解析 NASAより提供された宇宙フライトラットの大腿骨サンプルと、尾部懸垂及び坐骨神経切除ラットの大腿骨サンプルのマイクロアレイ解析を行った。結果、宇宙フライトサンプルでは5倍以上増加した遺伝子が14、5倍以上減少した遺伝子が108であった。一方、尾部懸垂サンプルでは増加73、減少2、坐骨神経切除サンプルでは増加20、減少3であった。宇宙フライトでは特に遺伝子発現をコントロールする遺伝子やシグナル伝達を制御する遺伝子の発現の減少が顕著であった。
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