ユビキチンリガーゼCbl-b遺伝子欠損マウスを用いた研究 (1)骨形成マーカーのmRNA発現 坐骨神経切除マウスの大腿骨における骨形成マーカー(アルカリフォスファターゼ、I型コラーゲン、オステオカルシン)の発現はCbl-b遺伝子欠損マウスでは有意な減少は認められなかった。 (2)IGF-1シグナル伝達分子の発現 坐骨神経切除モデルの大腿骨におけるIGF-1シグナル伝達分子(IRS-1、PI3K、Akt)の発現は、mRNAレベルではいずれも有意な変化は認められなかった。蛋白質レベルでは、IRS-1はCbl-b遺伝子欠損マウスでコントロール群、坐骨神経切除群共に有意な増加を認め、PI3K、Aktは野生型マウスの坐骨神経切除群で有意な減少を認めた。 (3)骨芽細胞におけるIGF-1シグナル伝達分子のユビキチン化 IGF-1シグナル伝達分子のうち、IRS-1、PI3K、AktそれぞれでCbl-bとの結合が確認されたが、ユビキチン化されていたのはIRS-1、PI3Kであり、またさらに分解が確認されたのはIRS-1のみであった。 (4)骨芽細胞のIGF-1に対する応答 野生型マウス頭蓋冠由来骨芽細胞にIGF-1を投与したところ、細胞数は約2倍に増殖したが、Cbl-b遺伝子欠損マウス由来骨芽細胞では約3倍に増殖した。一方、骨肉腫由来UMR106細胞にCbl-b遺伝子を過剰発現させたところ、IGF-1を投与しても細胞増加は認められなかった。 (5)Cbl-b遺伝子欠損マウスの大腿骨組織切片の骨形態計測では、坐骨神経切除を行っても骨形成及び骨吸収に変化は認められなかった。 以上の結果より、様々な骨量減少をきたす病態において、Cbl-bは骨芽細胞のIGF-1シグナルに対する反応性を減少させることにより、骨形成を抑制し骨量の減少をもたらしていると考えられる。
|