研究概要 |
骨芽細胞におけるコラーゲン合成の促進を目的として,コラーゲンの酵素消化産物であるトリペプチド(CTP)を培養骨芽細胞に与えその促進効果を評価した.またその作用機構の解明を明らかにするために,培養系におけるCTPの局在性を明らかにした. 骨芽細胞には数段階の分化過程があり,I型コラーゲンの合成が活発なのは,分化初期から中期の段階である.そこで,培養温度によって増殖・分化の制御を可能にしたヒト骨芽細胞(hFOB1.19)を利用した.hFOB1.19が発現したI型コラーゲンα鎖遺伝子のmRNAをReal Time PCR法で測定した結果,培養系にCTPを添加した場合に発現量が1.5倍程度まで増加した.また,骨基質の合成に影響を与えるとされるサイトカインや支持体を共存させたところ,特にハイドロキシアパタイトビーズ存在下でCTPの効果が増幅され,最大2.4倍程度に転写が促進された.実際に合成され細胞外に分泌されたコラーゲン量が優位に増加したこともELISA法によって明らかにした. その他,コラーゲン合成以外にCTPが培養骨芽細胞に与える影響について種々検討した結果,アリザリンレッド染色により骨基質の石灰化が促進される傾向がみられた. CTP作用機構の解析にあたり,CTPが細胞内に取り込まれるのか,あるいは特異的な細胞表面受容体によって認識されているのかを明らかにすることが必要であると考えられた.そこでCTPの主成分であるGly-Hyp-Proを蛍光標識して培養系に添加し,その局在性を共焦点レーザー顕微鏡で解析したところ,細胞内部にペプチドが取り込まれていることが分かった.これによりhFOB1.19細胞になんらかのペプチド取り込み機構が存在することが示唆された.
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