現在も、聖隷三方原病院・千葉県立がんセンター・社保神戸中央病院との協議を進めている。吐き気に関しては、先行研究である国立がんセンターの中間報告がなされた。着目していたA118Gの変異に関して、全く相関がみられなかったことがわかり、研究のデザイン自体を見直している。単なる吐き気ではなくモルヒネの初回投与により明らかに吐いた例とする案となっている。この先行研究ではモルヒネ大量投与群がなかったことや、近年発表された報告において大量投与と遺伝子多型の相関がある可能性が示されていたため、大量投与に至った症例に関するプロトコールを作成したが、モルヒネ大量投与となる原因は多岐にわたるため、集計するデータが多すぎ、実現性の点で他施設との合意がなされずにいる。 上記のように、遺伝子に関する研究が進行しないため、本年度は高カルシウム血症に関しての当院における傾向を分析・研究したものをまとめた。さらに、全国386名の医師よりアンケート集計した高カルシウム血症治療の傾向に関する研究を進め、本年度の緩和医療学会に発表した。予後1ヶ月と予測される時点における高カルシウム血症治療について肯定的な意見は84%、最後まで行うかという選択に関しての肯定的意見は43%に低下した。治療を控える要因になる因子についての質問では、予後予測1週間以内・本人が治療を希望していない・前回の治療にて不快な症状が悪化あるいは改善が不十分であることなどが多く指摘されていた。 さらに精神科医師と連携しリエゾンコンサルテーションサービス(以下CLS)に関するアンケートを行った。CLS開始前に比べ半年後には、「精神科的な問題に対して自身が対応できているか」という項目の自己評価値が有意に上昇した。「普段と様子が違う」という項目に対する困難度は低下した。緩和ケアセンターにCLSを行うことの有効性が示唆される結果となった。
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