研究概要 |
Geranylgeranylacetone(GGA)は,胃粘膜保護薬として日本で広く服用されているが,強力な細胞保護作用を示すストレス誘導性heat shock protein 70 (HSP70)を安全にかつ選択的に誘導することが報告されている.我々は,ウサギ局所心筋虚血モデルを用いて,虚血前のGGA静脈内投与が心筋保護作用を有すること,さらに吸入麻酔薬セボフルランにより心筋保護作用が増強されることを明らかにした.本研究は,セボフルランによる心筋保護作用の増強は,セボフルランが細胞内で活性酸素を産生しGGAによるストレスタンパク誘導を増幅するためであるという仮説をたてた.本年度はGGA +セボフルラン投与による心筋保護作用が活性酸素スカベンジャー(N-acetylcysteine ; NAC)を投与することにより心筋保護作用にどのように影響するかを調べた. 【方法および結果】 対照は虚血4時間前にvehicleを静脈内投与した.GGAは虚血4時間前にGGA5mg/kgを静脈内投与およびGGA5mg/kgを虚血直前まで持続静脈内投与した.セボフルラン(1MAC)は虚血1時間前に30分間投与した.熱ショック(HS)は虚血24時間前にウサギの直腸温を42℃15分間維持した.NACは虚血2時間前から30分間で150mg/kg投与した. Baselineおよび虚血直前の循環動態パラメータ値に群間および群内で有意差はなかった。 各群の心筋梗塞サイズは次のようであった. HS群(n=7):29±4%,対照群(n=9):53±6%,対照+SEV(n=7):58±4%,GGA群(n=5):39±5%,GGA+SEV群(n=4):34±2%,GGA+SEV+NAC群(n=5):63±7% GGAおよびGGA+SEVは対照群に対して有意に梗塞サイズを縮小した.NACはGGA+SEVの心筋保護作用を消失した. 活性酸素スカベンジャーの投与によりGGA+セボフルランの心筋保護作用は完全に消失した.これは細胞内の活性酸素が,GGA+セボフルランによる心筋保護作用の機序に重要な役割を持つ可能性を示唆する.
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