心筋虚血再灌流障害においてTNF-αなどのPro-Inflammatory Cytokineや、ICAM-1などの接着因子が障害の進展に重要な役割を果たしているが、これらの制御機構である転写因子Nuclear Factor kappa-B (NF-kB)の役割についてはいまだ不明な点がある。揮発性麻酔薬は薬理学的PC効果を有し、ATP感受性カリウム(KATP)チャネルを開口することで心筋虚血再灌流障害を抑制するが、NF-kBとの関連についての研究はない。 平成16年度は、揮発性麻酔薬が細胞内情報伝達機構に与える影響についての検討した結果以下のことを明らかにした。 1、ラット灌流心を用いた虚血再灌流モデルで、、再灌流後にMAPK familyであるERK、JNK、p38 MAPKおよび転写因子活性(NF-κB)が活性化していた。 2、TNF-α、ICAM-1の遺伝子発現も再灌流後心筋にて増加が認められた。イソフルラン、セボフルランにてバブリングを行った灌流液を30分間灌流させる。またはP-1075(細胞膜KATPチャネル開口薬)、ジアゾキサイド(ミトコンドリアKATPチャネル開口薬)を投与し、その後30分間の虚血を行い、2時間再灌流する。 3、揮発性麻酔薬イソフルラン、セボフルランの虚血前投与により、虚血再灌流後の心筋梗塞サイズが減少した。同時にERK、JNK、p38 MAPKおよびNF-κBの活性化が抑制され、TNF-α、ICAM-1の遺伝子発現も減少した。
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