人工呼吸管理症例における、呼気一酸化窒素(eNO)濃度測定法と、種々の病態におけるeNO濃度の変化を検討する目的で、研究を行った。 人工呼吸症例の換気モードにBreath-holdingを設定した上で、呼気回路に気道抵抗を付加し、呼気流速の変化を最小限にする工夫で、American Thoracic Societyの推奨法で得られる波形と近似した波形がえられ、この波形から呼気NOの産生部位(肺胞由来なのか気道由来なのか)を鑑別できることを報告してきた。 健常肺の症例を対象に、他の人工呼吸モードで測定すると、様々な波形のパターンが記録され、必ずしも人工呼吸モードと波形のパターンに関連性を見出すことができなかった。 そのため、通常の換気様式に加え、Breath-holdingと呼気抵抗を加えた前述の測定法を使用し、気管支喘息、慢性気管支炎、気道熱傷、原因不明の好酸球増多症症例で測定を行い、これらの病態の解析にeNO濃度測定が寄与する可能性を検討した。 気管支喘息症例は、測定時に気管支喘息のコントロール不良な症例やコントロール良好の症例で測定を行った。結果、気管支喘息のコントロール状況によらず、通常の換気様式での測定波形は、近似したパターンを示したが、Breath-holdingと呼気抵抗を加えた測定法では、phase3の波形でコントロール状況により異なるパターンを示した。これは波形パターンを解析することで、病態を推測できる可能性を示唆していると考えられた。 好酸球性炎症との関連を示唆する報告も多いが、今回測定した原因不明の好酸球増多症症例では、Breath-holdihgと呼気抵抗を加えた測定法でeNO濃度は健常肺と比べ高値を示した。 一方、気道熱傷症例では、症例数は少ないが、急性期および慢性期双方の症例でeNOが検出されなかった。 病態解析へのアプローチのため、症例の集積が望まれる。
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