(方法)正常ラットおよび神経型一酸化窒素合成酵素遺伝子欠損マウスの脳を各々摘出し、現有のビブラトームを用いて、新皮質を含む脳スライス標本(厚さ約150μm)を作成した。この標本を、酸素93%+炭酸ガス7%で通気したクレブス液で満たした観察チャンバーに入れ、顕微鏡で脳実質内動脈(内径10μm以下)を観察した。動脈径の変化をビデオカメラで撮影し、デジタル信号に変換した後、コンピュータに記録した。コンピュータ上で血管径測定用ソフトウェアを用いて解析した。一酸化窒素合成酵素阻害薬であるL-NAME存在下または非存在下に、プロスタグランジンF_<2α>で標本中の動脈を収縮させた後、NOドナーであるSNP及び、ドネペジルによる拡張反応を観察した。ドネペジルはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、アルツハイマーの治療薬であるが、血管への作用は不明である。アセチルコリン濃度が上昇した場合、一酸化窒素合成酵素が活性化され産生された一酸化窒素により血管拡張されそうだが不明である。 (結果)SNPはL-NAME非存在下の両動物で血管を拡張させた。ドネペジルはL-NAME非存在下の正常ラットで血管拡張させたが、神経型一酸化窒素合成酵素遺伝子欠損マウスでは血管拡張しなかった。L-NAME存在下ではすべて、血管拡張反応は抑制された。 (結論)ドネペジルは一酸化窒素合成酵素活性を介して脳微小血管を拡張させることが分かった。
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