CABG術中に鎖骨下動脈から上肢へ向かう末梢動脈の血管抵抗を変化させ、左内胸動脈(LITA)グラフトの血流量への影響を検討した。 【方法】LITAを用いた冠動脈グラフトによるCABG予定手術患者11名(69.2±11歳)を対象とした。人工心肺導入後、術野で剥離されたLITAのフリーフロー血流量を計測、そのあと左側上腕動脈をターニケット圧迫(1分間)し血管抵抗上昇時のLITA血流量を計測した。また体外循環離脱後、血行動態が安定した時点で超音波トランジットタイム血流量計を用い、LITAグラフトの血流量の持続測定を行った。1分間の左上腕ターニケット圧迫および解除時のLITAグラフト血流量を測定した。測定項目はLITAグラフト血流量、上腕平均血圧、心電図のST変化とし、測定時期はターニケット圧迫前、圧迫中、圧迫解除直後、圧迫解除1分後の4ポイントとした。 【結果】吻合前のLITAのフリーフロー血流量は圧迫前35.3±4.6mL/min、圧迫後61±5.1mL/minで有意に上昇を認めた(p<0.05)。また、吻合後のLITAグラフトの血流量(mL/min)は左上腕ターニケット圧迫前38±7.4、圧迫中46.9±8.1、圧迫解除直後36±4.8、圧迫解除1分後39.9±7.1であった。血流量は圧迫前と圧迫中との間(p<0.01)および圧迫中と圧迫解除直後との間(p<0.05)に有意な変化を認めた。測定期間中に上腕平均血圧および心電図STの変化は認めなかった。 【結論】上腕駆血阻血解除時に内胸動脈グラフトの血流量が低下し鎖骨下動脈-内胸動脈冠動脈バイパス盗血現象を示唆したが、心電図ST変化は認められず心筋への影響は少ないと思われた。1分間の阻血では反応性血流増加現象が未完成であったこと、また血管抵抗の変化だけでは盗血流量が少ないことが考えられた。1分間の上腕ターニケット圧迫時にLITA-LADグラフトの血流量が増加した。上腕動脈を圧迫することによりグラフト灌流域の血流増加が期待される。
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