申請者らは生体内に存在するニューロステロイド(以降NS)の抗侵害作用の全貌を明らかにするため、中枢神経、脊髄、末梢神経におけるNSの作用解析を計画した。(1)中枢神経系における作用解析:海馬スライスを用いたPatch-Clamp法によるGABA_A誘発性電流やGlycine誘発性電流に対するNSの作用の解析、(2)脊髄における作用解析:(2)-1ラット脊髄後角スライスを用いたPatch-Clamp法によるGABA_A誘発性電流に対するNSの作用の解析、(2)-2ラット培養脊髄後根神経節(DRG)細胞を用いたサブスタンスP(Sub P)、ニコチンなどの刺激による細胞内カルシウムの変動に対するNSの影響の解析、(2)-3ラット培養DRG細胞を用いたPatch-Clamp法によるニコチン誘発性電流、GABA誘発性電流等に対するNSの作用の解析、(3)再構築系による作用解析:アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いたムスカリン、Sub P、CGRP受容体のリガンド誘発性電流に対するNSの作用の解析、電位依存性ナトリウムチャネル(Naチャネル)に対するNSの作用の解析、である。 平成17年は、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて、NaチャネルのサブタイプであるNa_v1.2(中枢神経系に発現)、Na_v1.4(骨格筋に発現)に対するアロプレグナノロン(AP)、プレグネノロン(PREG)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の作用を検討した。その結果、APはNa_v1.2、Na_v1.4機能をともに抑制したが、PREG、DHEAはNa_v1.2、Na_v1.4ともに影響を与えなかった。APはニューロステロイドの中で最も抗侵害作用が強いとされ、PREG、DHEAは抗侵害作用が弱いことが知られている。これにより、APによるNaチャネルの抑制がその抗侵害作用機序の一つである可能性が示唆された。
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