申請者は、DNA修復欠損マウスにおける精子形成不全と遺伝的不安定性を解析するために、以下の実験を行い結論を得た。これまでの予備実験で、酸化的DNA損傷を認識する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、対照群に比べ加齢したXPAマウス精巣に、酸化的DNA損傷が多く蓄積することが示唆されていた。さらに、予備実験をコンファームするため、サンプル調整(サンプル調整中に人工的にDNAに損傷が加わることで結果が変わることを避けるため)や免疫染色の諸条件を検討し、本実験を行う予定である。一方、酸化的DNA損傷の生化学的解析から、上記の免疫染色の予備実験の結果が妥当であることは確認できた。このことから、加齢によるXPAマウスの精子形成不全が、酸化的DNA損傷の蓄積による可能性が示せた。XPAマウス精巣では、加齢によって酸化的DNA損傷が蓄積しやすい状況であることから、他の酸化的DNA損傷の蓄積についても同時に解析を進めている。また、他のDNA修復欠損マウスの精子形成過程についても解析中であり、DNA修復の精子形成への関与について新たな知見が得られるものと思われる。本研究で用いるp53ノックアウトマウスも当大学動物資源部門に導入中で、二重欠損マウスでの実験も開始する予定である。今後、上記、結果をふまえて、DNA修復とDNA損傷誘発アポトーシスの精子形成への関与が理解されることで、精子形成に対する遺伝的不安定性の分子病態が明らかになるものと考える。
|