研究概要 |
【腎細胞癌株でのシグナル伝達の検討】 我々は、すでに前立腺癌株と間質細胞との研究(研究基盤(B)(2)08457426)や膀胱癌と間質細胞との研究(研究基盤(C)(2)13671657)で3次元培養の研究を行っており、間質細胞が癌細胞株に増殖と分化度の増加に関与していることと検討した。さらに当科徳田が前立腺癌と脂肪細胞との3次元培養の結果、増殖分化度の増加に、さらに増殖因子との関係を明らかにした(BJU INTERNATIONAL 2003;91:716-720)。これに着目し、昨年、脂肪と関与するPI3Kシグナル伝達の異常について、2次元培養で細胞培養を行い、PI3Kシグナル伝達に関わる遺伝子発現としてRT-PCRで検討したが、細胞間でのRNA発現差は見られなかった。今回、腎細胞癌株(Caki-1,VMRC-RCW, KMRC-1,KMRC-2)とWister Ratの精巣上体周囲脂肪との3次元培養を行い、PI3Kシグナル伝達異常について検討した。 1:Wister Ratの脂肪細胞と腎細胞癌株の3次元培養では、4株とも脂肪と混合培養するとコントロールに比較し、増殖と分化が促進された。とくにCaki-1細胞とKMRC-2細胞は増殖を促す一方で、細胞形態の変化を認め、著明な分化を促進させた。VMRC-RCWとKMRC-1細胞には、細胞接着を高め、多くのコロニーが出現し、著明な増殖を促した。検討した細胞株は、腎細胞癌であるが、その反応に相違がみられ、癌細胞がそれぞれ独自の個性を有し、癌細胞-間質細胞相互作用について、一律ではないことが示唆された。ただし、脂肪細胞は、腎細胞癌の増殖分化を促進した。 2:蛋白発現を免疫染色で検討した。脂肪と混合培養するとコントロールに比較し、PI3Kを抑制因子PTENとAKT下流に存在する前アポトーシス因子BAD発現が低下していた。 3:現在、AKTのリン酸化、BADのリン酸化についての検討を施行中である。
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