腎細胞癌における、抗腫瘍免疫回避のメカニズムを解明すべく、本研究を着手した。これまで、B7-H1が抗腫瘍免疫反応において、強力なnegative regulatorとして、免疫回避機序に関与していることが明らかとなっていることから、腎細胞癌におけるB7-H1を中心に、関連因子を含めて発現を調べた。 手術で摘出した腎の腫瘍部と正常部を用い、18名の腎細胞癌患者について、RT-PCR法でB7-H1 mRNAの定量を試みた。B7-H1 mRNAは、正常部と比較して腫瘍部に増加している傾向を認めた。15名の腎細胞癌患者について、免疫組織染色で、B7-H1の蛋白としての発現を検討した。正常部と比較して腫瘍部の方が、染色性の高い結果が得られた。また、抗腫瘍免疫反応にpositive regulatorとしての役割を担っているB7-1の発現を調べた。18名について、RT-PCR法でB7-1 mRNAの定量を試みたところ、正常部と比較して腫瘍部に増加している傾向を認めた。18名について、免疫組織染色で、B7-1の蛋白としての発現を検討したところ、正常部と比較して腫瘍部の方が、染色性の高い結果が得られた。さらに、腫瘍免疫原性を確認するため、18名ついて、RT-PCR法でMN/CA-9 mRNAの定量を試みたところ、正常部と比較して腫瘍部に増加している傾向が確認された。 平成17年から18年にかけて、以下の点を検討する予定である。 (1)症例数を増やして、病期別の腎細胞癌患者におけるB7-H1とその関連因子の発現の意義を詳細に検討する。 (2)腎細胞癌のcell lineを用いてvectorを導入し、B7-H1の発現により、T cellのApoptosisが誘導できるか検討する。さらに、B7-H1の発現を抑制することにより、腎細胞癌を縮小させることが可能か否かを調べる。
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