研究課題
平成17年度(〜平成18年3月31日)の実績報告書<目的>Rho familyはRas類似の低分子量GTP結合蛋白であり、細胞の運動・遊走能のシグナル伝達に関わり、癌の浸潤・転移に重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、卵巣癌播種性転移におけるRhoAの役割を解析し、分子標的治療開発に向けた基礎的検討を行った。方法1)上皮性卵巣腫瘍のパラフィン切片109例、凍結組織42例を用いて、RhoA発現を免疫染色、Western blot、RT-PCR法で検討した。2)培養卵巣表層上皮細胞(OSE)および卵巣癌細胞株におけるRho発現を比較した。3)卵巣癌SKOV3細胞の浸潤能をLPA添加によるRhoA活性化、C3添加によるRhoA抑制下で検討した。4)SKOV3細胞にwild-type RhoA遺伝子を導入し強発現細胞株を樹立し、Rho阻害作用をもつHMG-CoA inhibitor(Lovastatin)添加で浸潤能の変化を検討した。5)RhoA強発現細胞をヌードマウスの腹腔内に注入し播種性転移モデルを作成し、Lovastatinの効果を検討した。結果) 1)RhoA mRNAおよび蛋白発現は良性腫瘍に比し癌で有意に増強していた。2)OSEに比べて卵巣癌細胞ではRho AmRNAおよび蛋白発現が亢進していた。3)LPA添加にて、RhoAのmRNA発現および活性型Rhoが増加し、浸潤細胞数は濃度依存性に増加した。この浸潤亢進はRho阻害剤C3にて抑制された。4)RhoA強発現細胞はin vitro浸潤能が亢進し、Lovastatin添加でその浸潤能は抑制された。5)ヌードマウスにおける播種形成ではLovastatin経口投与で播種巣数が減少した。結論)これらの検討から、Rhoが卵巣癌細胞の播種性転移過程に深く関与している可能性が強く示唆された。Rhoは卵巣癌の播種性転移にたいする新しい分子標的治療のターゲットとして有望であると考えられた。
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