NF-κBの主要サブユニットであるp65に対する阻害因子として新たに同定されたRelA-associated inhibitor(RAI)の、絨毛細胞の分化過程における発現の変動を検討した。まず、インフォームドコンセントの得られた各妊娠三半期の胎盤絨毛を用いたリアルタイムPCR法により、RAImRNAは妊娠週数とともに増加を認めた。局在に関しては、同様に各妊娠三半期の胎盤絨毛を用いた免疫組織染色により、RAIの免疫活性はsyncitiotrophoblastに主に限局していることが確認された。次にラット絨毛癌細胞株Rcho-1細胞におけるCATアッセイにて、ラットGLUT1遺伝子プロモーター活性に対するSp1、RAIの役割を検討した結果、RAIの強制発現によりGLUT1プロモーター活性は抑制されたが、Sp1結合部位を含まないGLUT1プロモーター変異遺伝子の場合ではその抑制効果は認めなかった。また、Rcho-1細胞の分化に伴うRAI蛋白量の変動をウェスタンブロット法にて検討したところ、Rcho-1細胞の分化に伴いRAI蛋白量の増加を認めた。 以上より、RAIは絨毛細胞に存在し、Sp1を介して胎盤絨毛の分化に寄与する可能性が示唆する結果を得ている。現在、今までのところをまとめて、第57回日本産科婦人科学会および第78回日本内分泌学会にて発表予定であり、また雑誌への投稿の準備中である。 現在、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるtrichostatin Aが、hCGα遺伝子を誘導するとの知見を得ているが、GLUT1遺伝子については安定した結果を得ていない。今後は、RAIがGLUT1遺伝子の絨毛細胞の分化過程におけるメチル化、アセチル化にどのような関連を持つのかを検討する方向で準備中である。
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