研究概要 |
ヒト正常子宮では,ユビキチン化蛋白が子宮内膜の腺上皮細胞で,細胞核においては恒常的に,細胞質においては月経周期の黄体期のみに存在することが免疫組織化学染色により示された.また子宮内膜症の一種である子宮腺筋症についても検討してみたところ,正所性子宮内膜では正常子宮内膜と同様の存在様式を示したが,病変部位の異所性子宮内膜では,細胞核のみならず細胞質においても月経周期を通じてユビキチン化蛋白が検出された.そして,子宮内膜症に対する治療薬であるGnRHアゴニストの使用により,異所性子宮内膜における恒常的なユビキチン化蛋白の検出が抑制されることも確認した. ところで炎症性疾患でもある子宮内膜症の増殖・進展には,NF kappa Bの活性化が関与していることが報告されている.このNF kappa Bの活性を制御しているI kappa Bはユビキチンの標的タンパク質であり,子宮腺筋症病変で検出されたユビキチン化蛋白の1つと予想された.子宮腺筋症の正所性および異所性子宮内膜におけるI kappa Bの局在とそのリン酸化を免疫組織化学的手法にて検討すると,I kappa Bは子宮内膜腺上皮細胞の細胞質に主に存在していた.そして異所性子宮内膜では,月経周期を通じてリン酸化されたI kappa Bの発現が認められた.またGnRHアゴニスト治療により,異所性子宮内膜腺上皮細胞におけるI kappa Bの発現には変化を認めなかったが,リン酸化I kappa Bの発現は有意に抑制された.さらに免疫沈降法とWestern Blottingにより,主に異所性子宮内膜でユビキチン化されたI kappa Bの存在が確認された. 以上より,子宮腺筋症病変でのI kappa Bのリン酸化を介したユビキチン化の亢進が,その病変形成に関与している可能性が示された.
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