1.CNh1遺伝子をヒト卵巣癌細胞に導入したときの影響の検討 ヒト卵巣癌細胞にGFPを発現するアデノウィルスベクターを用いてCNh1遺伝子を導入した。 SKOV3卵巣癌細胞でウエスタンブロット法によりGFP蛋白と結合した外来性CNh1蛋白質の発現とともにα-SMAのバンドの出現を認めた。βおよびγアクチンは変化しなかった。SHIN-3卵巣癌細胞におけるアクチンファイバーを共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、CNh1遺伝子導入により胞体内を縦走する太く長いストレスファイバーが出現し細胞自体も伸展し大きくなった。 CNh1導入による卵巣癌細胞増殖能への影響は単層培養系では変化を認めなかったが、軟寒天内培地でのコロニー形成能は低下した。 SKOV3i.p.1とSHIN-3卵巣癌株におけるトランスウェルチェンバーを用いた検討ではCNh1導入により有意に細胞運動能と浸潤能の低下を認めた。 2.CNh1遺伝子を腹膜中皮細胞に導入したときの影響の検討 マウス腹膜中皮細胞株CCL14にCNh1遺伝子を導入した。内在性に認めたα-SMA蛋白質の発現増強が生じたが、βおよびγアクチンの発現は変化しなかった。ヒト腹膜中皮細胞を当科で初代培養し、卵巣癌細胞の培養上清を添加したところ共焦点レーザー顕微鏡での観察で細胞内ストレスファイバーが減少した。CNh1遺伝子を導入したヒト腹膜中皮細胞では卵巣癌培養上清添加でも発達した長いストレスファイバーを維持し、細胞も伸展した形状のままであった。 トランスウェルチャンバーを用いた重層培養法による検討で、CNh1遺伝子を導入した腹膜中皮細胞層は卵巣癌細胞の浸潤を50%以下に抑制した。
|