平成16年度において頭頸部扁平上皮癌組織を用いた免疫組織学的な解析の結果、HLA class I抗原の発現低下が約70%にみられること、ペプチドトランスポーター(TAP)1、TAP2、tapasinの発現も約60%発現低下していること、さらにHLA class I抗原の発現低下とTAP1、TAP2の発現低下に高い相関を認めた。よってTAP1とTAP2の発現低下が腫瘍表面のHLA class I抗原の発現低下に深く関与し、腫瘍細胞が免疫監視機構を逃れている可能性が示唆された。さらにHLA class I抗原の発現低下した癌を持つ患者群では有意に生存率が低下していた。これらの研究成果は第10回Japan-Korea Joint Meeting of Otolaryngology Head and Neck Surgery(平成16年4月1日、東京)と第9回Asian Research Symposium in Rhinology(平成16年11月19日、ムンバイ、インド)にて口演し、高い評価を得た。 プロテアソームが癌細胞内でHLA class I分子に結合する腫瘍関連ペプチドを切り出す重要な働きをしていることが知られている。プロテアソームサブユニット(LMP2、LMP7、LMP10、delta(Y)、MB-1(X)、Z)を認識するためのモノクローナル抗体はこれまで数種しかなかった。我々は海外研究施設(Department of Immunology、Roswell Park Cancer Institute)との共同研究により、それらモノクローナル抗体を作製し、その特異性の解明がほぼ終了しつつある。今後頭頸部扁平上皮癌組織や細胞株における発現低下の程度を免疫組織学的に検討する予定である。
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