研究計画 癌細胞が細胞表面のHLA class I抗原の発現を低下させ、細胞障害性T細胞を中心とした免疫監視機構から逃避することが指摘されてきた。よってHLA class I抗原の発現低下が頭頸部癌患者の予後と密接に関わっている可能性を推測した。またHLA class I抗原の発現低下のメカニズムの一つとして抗原プロセッシングの異常との関連性に着目した。頭頸部癌(上顎癌、鼻腔癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌)組織、細胞株におけるHLA class I抗原の発現低下、ペプチドトランスポーターであるTAP1、TAP2を含む抗原プロセッシング蛋白の発現低下を明らかにし、臨床像との関連を解析することを計画した。 研究経過 頭頸部癌症例約200例、細胞株10株においてHLA class I抗原、TAP1とTAP2のみならず、多くの抗原プロセッシング蛋白の発現を種々の免疫組織学的、分子生物学的に解析した。さらに近年注目されている癌関連遺伝子、血管新生因子などの発現と臨床経過との関連についても研究を広げた。 研究成果 頭頸部癌組織、細胞株においてTAP1とTAP2の発現低下が蛋白レベル、mRNA発現レベルにおいても確認され、HLA class I抗原の発現低下と密接に関連していることが証明された。さらにTAPとHLA class I発現低下が癌の患者の予後に密接に関連していることを見出し、TAPとHLA class Iの発現回復が頭頸部癌治療の1つになる可能性に展望を開いた。さらに他の抗原プロセッシング蛋白であるLMP2、LMP7、LMP10、delta、MB1、Zなどの抗体を作製し、その特性を解析し、報告した。また頭頸部癌においてp21、p27、p53などの癌関連遺伝子などの発現を解析し、頭頸部癌患者の臨床像との関連を報告した。以上の成果を国内外の学会で口演し、また論文で報告し、高い評価を得た。さらに研究成果の一部を英文雑誌に投稿予定である。
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