研究概要 |
1.我々は以前よりフリーラジカル、一酸化窒素、グルタミン酸が虚血性内耳障害の主要障害因子であることを示してきたが、まず、これらの因子の虚血性内耳障害の進行機序への関与を検討した。その結果、虚血中の求心性神経障害にはグルタミン酸が強く関与し、再灌流時の外有毛細胞障害にはフリーラジカル、一酸化窒素が強く関与することが判明した。 2.フリーラジカルによる、音響性内耳障害での外有毛細胞障害の進行にp38MAPKが関与することを証明し、本酵素の阻害薬によりその障害進行が抑制されることを示した。 3.音響性障害に対し、現在頻用されているステロイド製剤の治療効果について検討した。メチルプレドニゾロンを音響障害マウスに投与し、その治療効果を検討したところ、強大音響負荷前、直後の投与では著明な内耳保護効果を有するものの、強大音響負荷後のメチルプレドニゾロンの内耳治療におけるtherapeutic time windowは比較的狭いことが判明した。また、他のステロイド製剤であるdehydroepiandrosterone sulfateの音響性内耳障害に対する保護効果を確認した。 4.内耳音響性障害に対する新たな治療薬剤の検討を行った。非ステロイド性消炎鎮痛薬ではリポキシゲナーゼ(LOX)、シクロオキシゲナーゼ(COX)の選択的阻害薬を検討したところ、LOX及びCOX1選択的阻害薬は内耳保護効果を有するが、COX2選択的阻害薬は内耳音響性障害に影響を与えなかった。またimmunophilinに関し、FK506,cyclosporinがそれぞれ内耳音響性障害に保護効果を有することが判明した。
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