聴覚機能を評価するとき、聴取閾値は重要な指標となる。通常の聴力検査で行われている125〜8000Hzの周波数の聴取閾値についてはその正常値などが設定されている。しかしながら骨導超音波を含む高周波数の音に対する聴取閾値の値については設定されていない。そこでそれらの周波数での聴取閾値がどの程度であるか、聴力正常者と難聴者で測定を行った。その結果聴取閾値を設定する上での様々な問題点があることが判明した。すなわち刺激装置などのハードウェアの問題だけでなく、聴取閾値自体に非常に個体差が大きく細かな閾値設定が難しいことがわかった。 また、上述の問題点を解決する方法として、まず一側性の障害であれば左右差を比較することで簡便に評価できるのではないかと考えた。そこで実際に左右差がどの程度であるか測定すると、個体差と比較して非常に小さいことが判明した。以上のことから骨導超音波聴覚を含む高周波音の聴覚機能の評価に左右差を比較することがある程度有効であると考えられた。 さらに骨導超音波聴覚を臨床応用するためには、その知覚メカニズムの解明や知覚の評価方法の確立だけでなく、安全性についての検討も不可欠である。安全性について検討するためには動物実験を行うことも必要と考えられる。そこで今年度はモルモットで骨導超音波刺激に対する蝸電図の測定を試みた。そしてモルモット用に作製した超音波刺激装置を用いることでその測定が可能であった。最終年度ではこの実験系を用いて様々な超音波刺激を用いた聴覚実験を行っていく予定である。
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