方法:骨導で音刺激を呈示したときに生体内に生じる音場をシミュレーションするため、所有する計算機の処理速度、メモリー空間に最適なモデルの構築条件(空間刻み、時間刻みなど)を算出した。また、計算の安定度および境界における吸収率の向上を図るため、吸収境界条件の最適化も行った。生体数値モデルは、X線CTおよびMRIを用いて人体を撮像し、画像処理を施し、組織別にラベルを付け作成した。 骨導音呈示時に人体頭部に形成される音場を時間領域差分法(Finite Different Time Domain Method)を用いて計算した。 この先、より詳細な解析を行うためには、より大きなメモリ空間、演算処理能力が必要となることが予想されるが、単一の計算機で搭載できるメモリ、演算処理能力には限界があるため計算の並列化が不可欠である。そこで、並列計算を行うPCクラスタの構築にも取りかかった。 結果:頭部内の音圧分布が、頭部の骨格の大きさや形状に影響されていることが分かった。このことは、骨導超音波呈示によって聴取されるのピッチ、ラウドネス、音像などが個人により異なることや、聴取可能部位に個人差が見られることなどを説明する一つの材料となりうる。 シミュレーションにより得られた骨導超音波呈示時の蝸牛近傍における音圧と、心理実験により得られた聴取音の大きさを比較した結果、両者に類似する特徴が見られた。このことは、骨導超音波の聞こえに蝸牛付近の音場が大きく関与していることを示唆しており、今後の詳細な分析により、知覚メカニズム解明へとつながる可能性が示された。
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