難聴は新生児約1000人に1人の割合で罹患が見られる感覚器障害で、先天性難聴の50%以上が遺伝性であると推定されている。このうち最も多い常染色体劣性非症候群性難聴(ARNSHL)は新生児約2500人に1人の割合で見られ、50〜100の異なる遺伝子が関与していると推定されている。我々は2001年にARNSHLであるDFNB8/10の原因遺伝子TMPRSS3を発見した。その後TMPRSS3の機能解析を進め、mRNAレベルでラセン神経節、コルチ器、血管条に発現を認めた。また、TMPRSS3タンパクは細胞内小器官のうち小胞体に局在して機能していることも明らかとなった。一方、TMPRSS3タンパクによって切断を受ける基質候補として上皮細胞ナトリウムチャネル(ENaC)を同定した。しかし、この基質が難聴に関与しているかどうかは今のところ不明であり、他の未同定基質が関与している事も十分考えられる。そこで我々は病態モデルマウスとしてTmprss3のKOマウスを作製し、これを用いてプロテオーム解析により未同定基質を明らかにすることを計画した。現在、8系統・18匹のキメラマウスが得られ、最終的に1系統のキメラマウスにおいてGerm lineへのトランスミッションを確認した。更にもう1系統についてもGerm lineへのトランスミッションを確認中である。
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