本研究の目的は、耳鳴のモデルとして、動物に強大音を負荷し、その後の聴皮質および蝸牛神経における神経活動の変化を急性期と慢性期について検討することである。サリチル酸およびキニンはそれぞれ人間・あるいはラットに投与すると耳鳴を誘発することが確認されている。以前ネコにサリチル酸およびキニンを投与したところ第1次聴皮質の自発放電活動の同期性が亢進し、そのことが耳鳴が起こっていることと関係していることを示唆した。以上報告されたような神経活動の変化が蝸牛神経から由来しているか、あるいは第1次聴覚野に起こっているのか明らかにすることが本研究の目的である。以前の報告では皮質からの記録はネコで行ったが、末梢の検討はほとんどモルモットで行っており、比較するためモルモットを用いた。 体重300〜400gramのモルモットを使用し、麻酔の導入にはペントバルビタールを用い、その後の麻酔の維持にはケタミンを用いた。聴皮質からの記録は、骨を除去後、聴皮質直上の硬膜を切開し、マイクロマニピュレータを用い、電極を脳表からおよそ第1次聴皮質に0.4〜2.0mm刺入し、記録を行った。記録中、脳はlight mineral oilで覆うようにした。それぞれ導出した電位はMedusa 16channelデジタルバイオアンプで増幅し、Brain Wareを用い1つの電極から最大8つの単一ユニットに分離し、自発放電数、発火パターンについて解析した。実験の最後には大量のペントバルビタールを腹腔内投与した。 昨年度は正常(未処置)のモルモットからの聴皮質からの記録に際し、種々の抵抗の違う電極、配列の違う電極などを用い記録の安定化に努めていたが、NeuroNexus Technology社製の電極(a4X4-4mm200-1250)を用いることで安定した記録が可能となり、強大音負荷後(急性期)の変化を解析中である。
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