まずコントロールマウスにおける鼻腔内の黄色ブドウ球菌の定着性をみるため、10^9CFU/mlの臨床分離された黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性及び耐性株)を20μl点鼻して経時的鼻内定着率を検討した。鼻洗浄液による結果は2日目より10^<3〜5>CFU/mlに減少し、その後2週間まで漸減する結果となった。アレルギー群としてはOVAに感作した鼻アレルギー感作マウスを作成した。現在、鼻腔内の菌の定着についてはコントロールと同様な実験系を予定している。また宿主側の要因として乳幼児における鼻内黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌の定着率を鼻アレルギーの有無において検討ており、年齢間で定着率が異なることを見いだした。今後はそれぞれの菌種、株間で定着率に差が出るかを検討する予定である。17年度は上記研究を継続とともに、鼻粘膜局所において黄色ブドウ球菌の定着率を検討予定である。細菌感染成立には宿主細胞表面への細菌の接着が第一段階であり、そのため細菌の接着因子に関する研究が多く行われているが、黄色ブドウ球菌が鼻腔に定着する機序については不明な点が多い。本研究による基礎的検討は重要であり、黄色ブドウ球菌の定着機構が明らかになれば、臨床面において将来的には黄色ブドウ球菌の新たな感染予防手段が解明される可能性が多い。具体的には鼻腔MRSAの除菌法やワクチン療法の開発の進歩が期待されると考えられる。また上気道炎の黄色ブドウ球菌以外の他菌種も含めた感染治療戦略となると考えている。
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