OVAに感作した鼻アレルギー感作マウスを作成し、鼻腔に10^6CFU/mlの臨床分離された様々な黄色ブドウ球菌懸濁液を接種して、1ヶ月後に鼻腔の黄色ブドウ球菌の定着率をOVAに感作していないコントロールマウスと比較する。本年度では鼻アレルギー感作マウスを完成させた。また臨床分離された黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)の菌調整を行った。そして鼻腔接種経路および菌回収手技を確立した。鼻内に定着した黄色ブドウ球菌はコントロールマウスよりアレルギー感作マウスで多い傾向にあった。現在鼻腔に黄色ブドウ球菌を保有していない鼻アレルギー感作マウスの鼻粘膜より上皮細胞を分離し、10^8CFU/mlの黄色ブドウ球菌を混合してCO_2インキュベーターで経時的に培養後、洗浄してグラム染色し、コントロールマウスと菌の接着数を比較検討中である。我々は以前、代表的な鼻腔常在菌でありまた病原性のある黄色ブドウ球菌(以下、黄ブ菌と略)に着目して、鼻アレルギー患者とコントロール群(鼻アレルギーのない健常人)で鼻腔の黄ブ菌保有率を比較し、鼻アレルギー患者で有意に高いことを報告したが、動物実験にて同様な結果が出るかを確認する。細菌感染成立には宿主細胞表面への細菌の接着が第一段階であり、そのため細菌の接着因子に関する研究が多く行われている。黄ブ菌が鼻腔に定着する機序については細菌側と宿主側因子から解析がおこなわれており、黄ブ菌はフィブロネクチンレセプターやラミニンレセプターがあると報告されている。しかしながら鼻アレルギーの鼻粘膜においてなぜ黄ブ菌が高率に定着するかに関する報告はない。本研究による基礎的検討は重要であり、黄ブ菌の定着機構が明らかになれば、臨床面において将来的には黄ブ菌の新たな感染予防手段となる可能性が多いに予想され、具体的には鼻腔MRSAの除菌法やワクチン療法の開発の進歩が期待されると考えられる。
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