研究概要 |
ラットに対して3,000luxの蛍光灯光を照射すると、24時間で視細胞の核が核濃縮を示すとともに、外顆粒層の厚さが減少し、3.5日後には外顆粒層の消失箇所が出現する。この過程において、核濃縮が認められていない12時間後の網膜に存在するmRNAに対してRT-PCR解析を行ったところ、ストレス応答遺伝子の一つであるheme oxygenase-1のmRNAの発現上昇が起こるとともに、細胞内への鉄の取込みに関与するtransferrin receptorのmRNAの発現減少を示した。この成果については、第27回日本分子生物学会(平成16年12月、神戸)で発表した。 ラット網膜光傷害において、照射する蛍光灯の照度を下げ、照射時間を短く設定して行ったところ、光照射時刻の違いによる網膜光傷害に違いが認められることが、形態観察およびTUNEL法により明らかになりつつある。このような光照射条件の検討を進めることにより、既に報告されている網膜光傷害と体内時計の関係をより鮮明にすることができると考えられる。 網膜光傷害は、同じ白色ラットであっても系統によっては、蛍光灯照射による網膜光傷害に対して耐性を示す種が存在する(例、Lewis系)。現在、遺伝的に異なる2系統の白色ラット(Wistar系とLewis系)における網膜の光感受性の差に着目し、それぞれの系統における光照射誘導性の遺伝子発現パターンの変化についてマイクロアレイ法により解析中である。今回使用するマイクロアレイ上には未知の遺伝子産物(EST)を含む約3万種の遺伝子情報が集積しているため、光傷害機序の違いから生じる遺伝子発現の差を網羅的に調べることにより、多くの遺伝子発現変化が見つかる可能性があり、新たな知見を見出すことが期待される。
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