研究概要 |
好中球とI型コラーゲンとの相互作用による,角膜実質細胞のコラーゲン分解に与える影響の検討 家兎より分離した好中球を単層培養あるいは種々の濃度のI型コラーゲンで作成した3次元ゲル内において48時間培養した。培養上清を回収し,家兎角膜実質細胞を含んだI型コラーゲンゲルに重層し,さらに48時間培養し,培養上清を限外濾過して得られた低分子コラーゲン断片を加水分解し,得られるハイドロキシプロリン量を測定し,コラーゲン分解量を定量した。 その結果,好中球を培養したI型コラーゲンの濃度依存的に角膜実質細胞によるコラーゲン分解が促進した。また,角膜実質細胞を含まないコラーゲンゲルに好中球の培養上清を添加しても,コラーゲン分解は促進しなかった。 培養上清中に含まれるMMP蛋白をwestern blot法で検討したところ,好中球培養上清自身にはMMP-1およびMMP-3の両者とも検出できなかった。一方,角膜実質細胞は少量のMMPを産生したが,好中球培養上清を添加することよりMMP-1およびMMP3蛋白の産生が促進した。この作用は,好中球を単層培養に比しコラーゲンゲルで培養した上清の方が,より強い促進作用を示した。さらに,角膜実質細胞におけるMMP mRNAの発現をreal-time PCRで検討したが,単層培養に比し,コラーゲンゲルで培養した好中球の上清は,角膜実質細胞に作用し,MMP mRNAの発現をより強く促進させた。 これらの結果より,好中球の培養上清自身は,コラーゲン分解活性やMMPなどを含んでいないが,effectorである角膜実質細胞に作用して,MMPの産生を亢進させる事を介して,コラーゲン分解を促進させるmodulatorとしての役割があることが明らかとなった。また,この促進作用は,好中球をコラーゲンでprimingするとより増強する事が明らかとなった。
|