研究概要 |
本年度は,昨年度の研究結果を基に,I型コラーゲンゲルとの相互作用により好中球より放出され,角膜実質細胞を活性化させる因子の検索を行った。 1)好中球の培養上清に,副腎皮質ステロイドおよび漢方薬の抽出物であるトリプトライドを添加して培養し,角膜実質細胞のコラーゲン分解活性を測定した。またRNAを抽出し,real-time PCR法を用いてMMP mRNAの発現を検討した。ステロイド剤およびトリプトライドはいずれも濃度依存的に,好中球培養上清によって促進された角膜実質細胞によるコラーゲンゲル分解を抑制した。またこれらの薬剤は角膜実質細胞のMMP mRNAの発現を抑制した。 2)好中球の培養上清にIL-1 receptor antagonistを添加して角膜実質細胞のコラーゲン分解活性を測定した。その結果,IL-1 receptor antagonistの濃度依存的にコラーゲン分解が抑制された。 3)好中球を健常人の末梢血より分離し,単層培養あるいはコラーゲンゲル内において一定時間培養し,培養上清を回収し,Multi-Plexサスペンションアレイシステムで17種類のサイトカイン濃度を測定した。I型コラーゲンゲル内で培養した好中球では単層培養した好中球に比し,TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインの産生の促進が認められた。またIL-8などの種々のケモカインの産生促進も認められた。好中球によるIL-8の産生はゲル内のコラーゲンの濃度依存的に促進された。 これらの結果より,好中球はコラーゲンゲルで培養すると活性化され,種々のサイトカインやケモカインを放出し,これらの因子が角膜実質細胞に作用してコラーゲンゲル分解を促進することが明らかとなった。またこれらの相互作用によるコラーゲンゲル分解は,ステロイド剤やトリプトライドなどの薬剤によって制御可能であることが明らかとなった。
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