研究概要 |
前年度までの研究で、Affymetrix GeneChip(MGU74Av2)を用いて、正常と虚血網膜を比較検討したところ、クリスタリンなどの、血管関連というより、神経網膜の発生、機能維持に関与する遺伝子に発現レベルの差があることがわかっため、神経網膜の発生の分子機序についてマイクロアレイを用いて解析した。この過程で、マイクロアレイの正確な利用にはハイブリダイゼーション、ノーマライゼーション、データ解析などさまざまな点で最適化が必要であることがわかった。近年、Expressionマイクロアレイに加えて、遺伝子型タイピングマイクロアレイの実用性が向上してきている。そこで、遺伝子型タイピングマイクロアレイの有用性について検討した。対象はadCORDと診断した日本人発端者とその父親である。インフォームドコンセントを得た後に患者末梢血からゲノムDNAを抽出後、adCORDと原因遺伝子が部分的に合致するレーバー先天盲の変異部位を網羅した遺伝子チップ(LCAチップ)による変異スクリーニングを行った。また、GUCY2Dの全エキソンのダイレクトシークエンスを行った。チップ解析の結果では、AIPL1、CRX、GUCY2D遺伝子中に計5個の遺伝子多型を認めた。この結果は全てダイレクトシークエンスと一致した。GUCY2D遺伝子のダイレクトシークエンスでは、発端者および父親にチップ上にスポットされていない新規のミスセンス変異(2540A>T,2541G>C,2542A>C)を認め、3塩基変異とも同一のアリル上に存在した。錐体ERGでは反応は消失し、桿体ERGの振幅も低下していた。今回、日本人adCORD患者でGUCY2D遺伝子の新規変異を同定した。適切な変異部位を網羅した遺伝子チップを作成すれば、疾患原因遺伝子変異と疾患修飾遺伝子を同時にスクリーニングできる可能性が示唆された。
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