研究課題
本研究では、内眼手術における新規手術補助薬の探索を行ってきた。これまでに2種の色素について安全評価のための前臨床試験を終え、手術補助薬として、所属機関の倫理委員会で前臨床試験の結果をもとに臨床研究の審査・承認をうけた。これらのうちBrilliant Blue G(BBG)について、安全評価のための前臨床試験として行ったラットを使用した実験では、前房中に高濃度のBBGを注入した場合角膜内皮細胞における形態変化や細胞数の減少、さらにアポトーシスは認めず、従来品と比較し極めて安全であるという結果を得た。さらに網膜対する影響を検討するため硝子体腔に注入を行ったが、電子顕微鏡を用いて行った観察でも高濃度暴露群において、網膜の形態には変化を認めず、さらに網膜電図(ERG)の観察でも振幅の低下は生じなかった。さらにカニクイザルを用い実際に硝子体手術を施行し、BBGでの内境界膜染色と剥離を行った。内境界膜は低濃度(0.5mg/ml)の本剤で明瞭に染色され、内境界膜の剥離も容易に実施できた。術後6か月間眼底および螢光眼底造影での経過観察を行ったが、網膜変性などの重篤な合併症は認めなかった。さらに硝子体手術136例(内境界膜染色)、白内障手術42例(水晶体前嚢染色)について、臨床研究を実施した。本剤はきわめて低濃度(0.1-0.25mg/ml)でも手術を実施するにあたり十分な染色性を有している。眼内での染色の特徴として、網膜内境界膜や水晶体前嚢については良好な染色性を示したが、黄斑上膜や残存硝子体などについては染色を認めなかった。有害事象については、経過観察が可能であったすべての症例について、薬剤によると考えられるいかなる合併症や副作用も認めておらず、高い眼内での安全性と、臨床使用における有効性が証明されている。これらの結果(前臨床試験および黄斑円孔と黄斑上膜での成績)は学術雑誌に発表した(研究業績参照)。さらに以上について「A staining composition for staining ophthalmic membrane.」の表題で国際特許(PCT)に出願中である。
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Retina (in press)
Arch Ophthalmol. (in press)