視野闘争刺激による大型弱視鏡を用いた自覚的評価の一眼の像のみの自覚時間の結果と視覚誘発脳電位を用いた他覚的評価の振幅増減率結果を組み合わせることで、眼優位性のパターンを3群に大別できることが昨年度の研究より推察された。しかし、このうち2群(振幅増減率で増大群と減弱群)において自覚的評価で得られた一眼の像のみの自覚時間は類似した結果であった。自覚的評価に用いた大型弱視鏡は臨床の場で両眼視機能検査時に頻繁に用いられる機器であり、他覚的評価に用いた視覚誘発脳電位測定に比べ臨床応用しやすいと考えられる。このため、自覚的評価の類似している2群を精査し、自覚的評価のみでも眼優位性の強弱評価が可能かを検討する目的で、3種の刺激領域(中心2度、2-5度、5-8度)における一眼の像の自覚持続時間を解析した。また、臨床で優位眼決定に用いられることの多いhole in card testで優位眼を測定し、一眼の像の自覚時間の左右差と比較検討した。 振幅増大群では、一眼の像の自覚持続時間は刺激領域が周辺になるほど短く、両眼で像を同時に自覚する時間が増加する傾向を示した。振幅減弱群では増大群に比べ、刺激領域が周辺になるほど一眼の像の自覚持続時間は長く、両眼で像を同時に自覚する時間は大きく変化しない傾向にあった。また中心2度刺激で180秒間の測定時、一眼の像の自覚時間の左右差が10秒以上あったものはhole in card testで決定された優位眼と一眼の像をより長く自覚する眼の一致がみられた。 領域の異なる刺激を複数用いることで大型弱視鏡を用いた自覚的評価でも大まかな眼優位性の評価は可能であると考えられた。しかし、より詳細に眼優位性の強弱評価や優位眼決定を行なうには、他覚的評価、hole in card testなど複数の検査結果を組み合わせて評価する必要があると考えられた。
|