研究概要 |
ムチン産生促進作用のあるgefarnate(geranyl farnesyl acetate)は、粘膜上皮の杯細胞からのムチン産生を促進することから、胃では防御因子増強型潰瘍治療薬として既に市販されている。杯細胞は眼の結膜上皮にも同様に多数存在しており、昨年までに、家兎の涙腺除去モデルに下眼瞼結膜のアルカリ外傷を作成しての、gefarnate点眼による創傷治癒効果を判定を行ったところ、3週目で基剤点眼群に比べて有意な改善を認めた。 本年度は、まず別のドライアイモデルとしてのコンタクトレンズ装用モデル(CLモデル)を完成させるべく、基礎的な研究を行った。ニュージーランド白色家兎の両眼の瞬膜を実験開始1週間前までにあらかじめ切除し,感染症などの合併症を発症しなかった動物のみを用いた.瞬膜切除は、家兎に塩酸ケタミン及びキシラジン塩酸塩混合液を筋肉内投与しての全身麻酔下で行った.片眼にSCLを装用し、脱落防止のために瞼々縫合を置き、反対眼は正常対照とした。SCL連続装用眼では装用1ヶ月目に点状表層角膜症、および涙液分泌量減少を認めたが、やはりレンズ脱落やレンズの汚れが目立つ例があったこと、および角膜潰瘍を生じる例もあったことから、長期装用によるドライアイ発症モデルとしては適さないと思われたことから、このモデルを用いてのgefarnateの効果判定は困難と判断した。 結局、昨年得られた涙腺除去モデルの結果と正常眼での創傷治癒効果とを比較すべく、眼異常の無い家兎6匹を用い、0.5%NaOH溶液によるアルカリ外傷後のgefarnate効果判定を行った。ゲファルナート投与眼では基剤投与眼に比べて、生体染色スコアが受傷後2〜3週目で改善を認めた。これをドライアイモデルでの結果と比較したところ、gefarnateによる効果は正常眼での方が強いと考えられた。
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