目的:杆体1色型色覚は、常染色体劣性遺伝形式をとり、低視力、羞明、眼振を3主徴とする疾患である。1998年、CNGA3遺伝子変異が同定されて以来、現在までにCNGB3とGNAT2を加えた3つが原因遺伝子として報告されている。今回、東京慈恵会医科大学眼科で杆体1色型色覚と診断された13家系14症例についてCNGA3遺伝子解析を行った。新規のCNGA3遺伝子変異(L633P)が検出された杆体1色型色覚の1症例について報告する。対象と方法:症例は22歳の女性。幼少時より原因不明の両眼低視力と羞明を認めている。今回、低視力と差明の精査目的で当科を紹介された。視力、Goldmann視野、色覚、全視野刺激網膜電図、眼底検査、分光感度測定を施行した。インフォームド・コンセントを得た後、末梢静脈血よりゲノムDNAを抽出しCNGA3遺伝子の全翻訳領域に対しPCR法を行い塩基配列を解析した。結果:視力は、左右眼ともに(0.1)で、生来の羞明を認めた。視野検査で中心暗点を認め、石原色覚検査表は第1表以外判読不能で、パネルD-15はfailで一部の混同線がscotopic軸に一致していた。眼底検査では著変を認めなかった。網膜電図検査で、杆体反応及びフラッシュ反応は、正常範囲であったが、錐体系反応は検出されなかった。遺伝子解析の結果、CNGA3に複合ヘテロ接合変異(p.R436W、p.L633P)が検出された。P.R436Wは海外で報告があるが、L633Pは新規変異であった。本症例で、CNGB3、GNAT2に遺伝子変異を認めなかった。結論:我が国における杵体1色型色覚で発見された最初のCNGA3遺伝子変異を報告した。Leu633は、他の哺乳類(牛、マウス、ラット)間で保存されていることから機能的に重要な部位と考えられた。
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