糖尿病網膜症は本邦での中途失明の第一原因である。糖尿病網膜症における新生血管の発現は、硝子体出血を引き起こし、その後増殖膜の発生により網膜剥離を引き起こし、失明に至らしめる。新生血管の発現初期には網膜光凝固により新生血管を消退することが可能な場合もあるが、ほとんどの場合は硝子体手術を必要とする。一度発現した新生血管を消退させるための有効な薬物療法は現時点ではない。 糖尿病網膜症における新生血管の薬物による予防法として、今回、網膜新生血管に対する抗体療法を考案し、酸素依存性眼内新生血管病モデルマウスと正常マウスを用いて、網膜新生血管発現の抑制に対する効果の実験を現在進行中である。生後7日目のマウスを75%酸素濃度のボックス内で5日間飼育した後、生後12日目から通常大気中で飼育し、酸素依存性眼内新生血管病モデルマウスを作成。その後、網膜新生血管発現の抑制に有効と考えている抗体薬物を投与して、生後17日目にマウスから眼球を摘出して薬物投与群と非投与群および正常マウスにおける網膜新生血管の発現状態の差異を光顕および蛍光色素による血管造影を用いて現在比較検討中である。さらに、電顕での超微細構造レベルでも比較検討中である。網膜新生血管発現の抑制を遺伝子レベルで解明するために、摘出眼球から神経網膜を採取し、mRNAを抽出し、cDNAマイクロアレイ法およびRT-PCR法を用いて比較検討し、治療法の効果、影響をあわせて考察する予定である。
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