創傷治癒においてbFGFの結合性による創傷治癒への影響を検討しており、本年度は創部に存在する変性したコラーゲンであるゼラチンに注目した。 ゼラチンは常温に近い温度でのゾルゲル変化が可能であり、条件により異なる等イオン点を得ることが可能である。そのため、bFGFと結合しやすいゼラチンを精製し、bFGFをポリイオンコンプレックスにより結合させ、ゼラチンに結合したbFGFを徐放化させる事を試みた。具体的には等電点9の酸性ゼラチンを担体としてもちいbFGFを結合させて、効率よい吸収と徐放化に成功した。 また、II型糖尿病モデルマウスの背部に作製した全層皮膚欠損創にbFGF徐放性ゼラチンを貼付し、創傷治癒への影響を組織学的に検討した。ゼラチンと結合したbFGFは、肉芽形成を活発化させ、より厚い肉芽組織が形成されることが分かった。また、上皮の進展率も向上させることによって、創部の早期の上皮化を促すことが分かった。さらに創の収縮率も増すことが分かった。つまり、肉芽形成と上皮化を促進することにより、創傷治癒を促進させることがわかりそれを報告した。これらの作用は従来、bFGFにて認められる作用であるが、徐放化することにより非結合型のbFGFの単回投与よりもすぐれた効果であることが認められた。また、ゼラチンとbFGFは結合している場合も非結合状態と同様の作用を示すことが分かった。 次年度にはヘパリン硫酸プロテオグリカンとbFGFの影響を検討する予定である。
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