Wntシグナルファミリーは個体発生に重要な分泌性糖タンパクであり、そのサブファミリーのWnt-10bは発生分化、発毛に関与し、種々の臓器からも産生される。本年度の目標として、免疫細胞から分泌されるWntタンパクの検出および精製、またその活性について調べた。C3H/HeNマウス脾臓より単離したリンパ球を種々のT、B cell activatorで刺激し、Wnt-10bの分泌にどのように働くのかをELISPOT法により詳細に調べた。その結果、concanavalin A(ConA)が最も産生を亢進させることが明らかとなった。さらにこのConAで刺激したリンパ球より分泌されるWnt-10bをWnt-10b抗体固定化アフィニティカラムにより精製し、マウス皮膚初代上皮細胞培養系に添加することで、その分化制御ついて調べた。その結果、精製Wnt-10bの添加に伴い、遺伝子レベル(RT-PCR)あるいはタンパクレベル(免疫染色)で上皮細胞の分化誘導が引き起こされていることが明らかとなった。また、マウスより単離した初代毛乳頭細胞に精製Wnt-10bを添加すると、その増殖は著しく変化することがわかった(以上の結果は、第34回日本免疫学会総会にて発表)。以上のことから、Wnt-10bは免疫系細胞を介した発毛制御に重要な因子であることが考えられる。本年度の目標である、Wntタンパクの単離に成功し、in vitroでの活性が認められたため、来年度さらにin vivoでの活性を詳細に調べる予定である。
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