研究課題
アポトーシスと創傷治癒の関係を明らかにするために実験を進め、これまでの概念を覆す研究結果と、さらにその結果を踏まえた上に念願であった簡便でかつ継続した実験系が可能な瘢痕形成実験モデルの作成に成功した。以前には創傷治癒のメカニズムが2回のアポトーシス(前期および後期)に起因し、その規則的パターンによって正常な修復がおこなわれるということを立証していた。そこで、このアポトーシスをさらに詳細に探索すると、これまでミトコンドリア・アポトーシス抑制因子として考えられてきたBcl-2が実は前期アポトーシスを促進させ、後期アポトーシスを抑制させることによってアポトーシスが正常な創傷治癒過程を発現されているということが解明された。この結果により、従来提唱されていたアポトーシス機序であるBcL-2非依存性肉芽組織誘導による創傷治癒機序が完全に否定された。さらに、このアポトーシス機序が正常に機能しなくなった場合、創傷治癒過程が破綻し肥厚性瘢痕やケロイドの生育につながるのではないかという発想の下に、正常な創傷治癒を抑制し瘢痕やケロイドを作成するモデルを立案した。その実験系はアポトーシス誘導因子であるFasおよびFas-Lに対するポリクローナル抗体を創傷部位に局所投与し、アポトーシス阻害反応を行うことで、正常なアポトーシスによる創傷治癒と比較した。この結果、正常治癒過程では前期および後期アポトーシスが発現する時期に一致してFasおよびFas-Lを阻害した実験系では瘢痕組織が発生し、さらに後においても治癒せずに、陳旧性瘢痕組織となった。以上のことにより、創傷治癒メカニズムはミトコンドリア・アポトーシスが正常な創傷治癒過程をもたらし、特にこのアポトーシス阻害によって瘢痕形成を導く事が確認され、これによって創傷治癒組織瘢痕実験モデルが確立された。
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The Abstract-booklet of Wound Healing-Symposium in the 77^<th> Congress of Japanese Pharmacology Meeting S-1
ページ: 62
第13回日本形成外科学会基礎学術集会抄録集 Vol.1
ページ: 58