研究概要 |
細胞がストレスに応答して防御・修復する機構には,細胞内情報伝達経路の1つであるp38キナーゼストレス応答経路が関与している.この経路の顎関節滑膜における関与を明らかにするため,経路の下流ターゲットタンパクである,MAPKAPK-2およびHsp25に着目し,その分布をラット顎関節滑膜において免疫細胞化学的手法,および共焦点レーザー顕微鏡法を用いて検索した結果,以下のような所見を得た. 正常ラット顎関節滑膜表層細胞にはマクロファージ様A型細胞と線維芽細胞様B型細胞の2種類が存在するが,MAPKAPK-2は両者の細胞質および,一部の細胞の核に存在していた.MAPKAPK-2とHsp25の二重染色を施すと,B型細胞の細胞質のみに共陽性反応が認められた.さまざまなストレスが引き起こすp38経路の活性化により,細胞質内においてMAPKAPK-2活性化を経由してHsp25が細胞骨格のアクチンを制御することが知られており,このことから正常な顎関節においても,咬合などのストレスによって滑膜表層B型細胞の細胞骨格を変化させている可能性が示唆された. また,関節円板内の細胞や軟骨細胞の一部にもMAPKAPK-2とHsp25の共存を認めた.滑膜表層細胞と同様にともに細胞質に認められ,ラット顎関節組織においてp38ストレス応答経路が広範に作用していると考えられた. なお,これら一連の研究成果を得るのに,本研究補助金で購入した画像解析用パーソナルコンピュータを活用した.
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