目的:歯周病原性Treponema denticolaは、動脈瘤や心冠状動脈血管内壁プラークからも検出され、心血管病変との関連性が指摘されている。本菌は血管内皮細胞層を貫通するという報告はあるが、侵入しているのか細胞間隙を通過しているのかは明らかにされていない。そこで今回私どもは、T.denticolaの血管内皮細胞に対する侵入性を検討した。 方法:T.denticola ATCC35405株およびそのキモトリプシン様タンパク分解酵素dentilisin欠損株をそれぞれトリチウムラベルし、TYGVS培地で1週間嫌気培養した。培養後、菌体に対するヒト膀帯静脈血管内皮(HUVE)細胞侵入性をMultiplicity of Infection (MOI)10から1000で検討した。さらにT.denticola侵入性へのアクチン重合阻害剤や微小管阻害剤による影響を検討した。 結果と考察:T.denticola ATCC35405株は、MoI100で最も高い侵入性を示した。Dentilisin欠損株であるK1株は、親株に比べHUVE細胞侵入性が10%と低下していた。透過型電顕の観察から、菌体はcytoplasmic membraneに付着後、侵入していると考えられた。細胞内には、vacuoleに囲まれた侵入菌体はほとんど認められず、また菌体は核膜に剰達している像が観察された。また野生株の細胞侵入性はアクチン重合阻害剤であるcytochalasin Dによりて阻害された。本研究の結果からT.denticolaのHUVE細胞侵入性は、dentilisinが関与しアクチン重合を介していることが示唆された。
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