【目的】歯周病原性Treponema denticolaは、動脈瘤や心冠状動脈血管内壁プラークからも検出され、心血管疾患との関連性が指摘されている。私どもは、昨年度T.denticola ATCC 35405は、dentilisin欠損K1株よりヒト口腔上皮細胞や血管内皮細胞に対し侵入性が高いことを見いだし昨年度本報告書に発表した。本年度は、血管内皮細胞にT.denticola ATCC 35405を感染させ、その発現遺伝子を検索した。 【方法】T.denticola ATCC 35405株及びK1株をTYGVS培地で3日間嫌気培養した。培養細胞は、臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用い、6wellプレートで継代し、実験に使用した。感染は、Multiplicity of Infection (MOI)=1:100、5% CO_2下で8時間行った。感染細胞のtotal RNAを抽出し、cDNAを作製、精製し、ビオチン標識cRNAを合成、hybridization後GeneChipで発現を検索した。GeneChip Scanner 3000でスキャン後、GeneSpring softwareで発現解析を行った。 【結果と考察】非感染HUVECと比較し、T.denticola ATCC 35405感染により3倍以上発現が増加あるいは減少した遺伝子は1319種認められた。細胞骨格関連遺伝子が5種、接着関連遺伝子が3種、その他シグナル伝達関連遺伝子、炎症関連遺伝子などであった。細胞骨格遺伝子の中でも特にアクチン重合関連遺伝子の発現が増加した。T.denticola ATCC 35405の血管内皮細胞への感染は、アクチン重合遺伝子を活性化させ、細胞骨格の再構成を引き起こし侵入することが考えられる。現在これらの遺伝子についてmRNAレベルで発現の確認を行っている。
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