ビスホスホネート(BP)は強力な骨吸収抑制作用を有する薬物であり、現在、悪性腫瘍で惹起される高カルシウム血症や骨粗鬆症に使用されている。BPの側鎖によって骨吸収抑制作用は異なることが報告され、チオメチルフェニルチオ基を持つBPは骨吸収抑制と抗炎症作用、特にPGE2の産生抑制することを確認している。今回、このBPの歯周疾患への応用を考え、マウス頭蓋冠器官培養を用いて検討した。 側鎖にチオメチルフェニルチオ基をもつBPはマウス頭蓋冠器官培養において以下の結果を得た。 1)LPS刺激によるNOの産生を減少した。 2)LPS刺激によるTNF-alphaの産生を減少した。 チオメチルチオ基のNO産生抑制を調べるため、無細胞系の実験を行い以下の結果を得た。 1)キサンチン-キサンチンオキシターゼ系で発生させた活性酸素を濃度依存的に減少した。 2)NOドナーを用いて産生させたNOは減少しなかった。 これらの結果からチオメチルフェニルチオ基を持つBPは活性酸素をスカベンジするという抗酸化作用を持ち、この作用によってNOの産生を抑制した可能性が考えられた。また、LPS刺激によるTNF-alphaの産生抑制したことから、歯周疾患の重要因子の一つであるTNF-alphaを抑えられ、また以前にPGE2の産生抑制の結果を得ていることを合わせると歯周疾患治療薬として応用できると思われた。しかし、NOとTNF-alphaの関連性は今のところ不明である。NOとTNF-alphaとの関連性を今後検討し、さらにラット歯周炎モデルを作成し、このBPを全身または局所投与を行い、歯周炎への効果を調べる予定である。
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