研究課題
ビスホスホネート(BP)は強力な骨吸収抑制作用を有する薬物であり、現在、骨粗鬆症や悪性腫瘍による高カルシウム血症などの骨吸収有意な疾患に臨床で使用されている。これまでに、側鎖にメチルチオフェニルチオ基をもつTRK-530はin vitroにおいてプロスタグランジンE2の産生抑制や抗酸化作用の抗炎症作用と骨吸収抑制作用併せ持つBPであることを報告してきた。今回、ラットの第一臼歯にリガーチャーバンドを巻き、実験的歯周炎モデルを作成しin vivoにおけるTRK-530の有効性について検討した。リガーチャーを巻いた第一、第二臼歯間の歯槽骨の骨密度(BMD)はTRK-530の全身投与において濃度依存的に減少を抑制した。組織学的に非投与群では歯槽骨の吸収を活発に行っている破骨細胞を認め、歯槽骨が吸収されている像を呈していたが、TRK-530投与群では歯槽骨の吸収が抑制され、破骨細胞は多数存在するが、骨表面から離れている破骨細胞も多数認めた。また、TRK-530投与群では歯槽骨の吸収抑制の結果、歯根膜の破壊が少なかった。また、局所投与においてもTRK-530は歯槽骨のBMDの減少を抑制した。組織学的には歯槽骨に認められる破骨細胞は非投与群では多数の破骨細胞を認めたが、TRK-530投与群ではその破骨細胞数は減少していた。これらの結果から、TRK-530は歯周疾患における炎症性の歯槽骨吸収を抑制できる可能性があり、その投与方法は全身および局所投与ともに有効であると思われた。TRK-530には骨吸収抑制作用と抗炎症作用を併せ持つBPであると報告してきたことあわせると、TRK-530は歯周疾患に有効な薬物である可能性が考えられた。
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